誰かあの本を知らないか

読むことについて書かれた作文ブログ。

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H・G・ウェルズ『世界文化小史』世界最終戦争の顛末

〈大戦争〉 日本にとって世界大戦といえば、第二次世界大戦がまず頭に思い浮かぶが、世界史つまり西欧史では第一次世界大戦のことを言う。 英語でも、いまだに定冠詞をつけて“The Great War”〈大戦争〉と言う。 本書『世界文化小史』は、1920年に刊行された…

福沢諭吉『学問のすゝめ』第三編 パクス・ブリタニカの時代

ヴィクトリア女王の時代 一身独立して一国独立すること 第一条 独立の気力なき者は国を思うこと深切ならず 第二条 内に居て独立の地位を得ざる者は、外にありて外国人に接するときもまた独立の権義を伸ぶること能わず。 第三条 独立の気力なき者は人に依頼し…

福沢諭吉『学問のすゝめ』維新と腐敗

明治初年は文芸文学の空白地帯とされる。 それを埋めてあまりあったのが福沢諭吉『学問のすゝめ』や中村正直『西国立志伝』、他、明六社同人の啓蒙活動である。 その「実学」への偏重は、文学はともかく明治以降の「学問」のありかたを決めた。それについて…

坪内逍遥『河竹黙阿弥伝 序』歌舞伎の歴史

坪内逍遥が「新旧過渡期の回想」*1と題して、明治初年から10年あたりまでの文学の動向を、懐古的に記している。 『小説神髄』を著して、ちょっと外に類例のない実践編を含む概括的な理論書をものした逍遥だから、目配りがきいていて、全体像をつかむことに優…

仮名垣魯文『高橋阿伝夜刃譚』新聞連載のさきがけ

〈三条の教憲〉と教部省 啓蒙の時代と戯作 新聞と〈つづき物〉 高橋お伝の略歴 前回、『鳥追阿松』について書いた。これはもう、誰も読むひとがないだろうと思ったら、案外そうでもない。どこの誰が読んでいるんだろうと思えば興味は尽きないが、話も尽きな…

久保田彦作『鳥追阿松海上新話』毒婦の明治維新

解題 あらすじ 毒婦物 解放令 毒婦の明治維新 解題 解題*1を始めに。 タイトルは『とりおいおまつかいじょうしんわ』と読む。 作は久保田彦作。掲載は仮名垣魯文の『假名読新聞』に明治10年12月10日から〈つづき物〉として連載された。今では珍しくない連載…

村上春樹『ハンティング・ナイフ』歴史の終焉を切り裂くナイフ

村上春樹『ハンティング・ナイフ』。『回転木馬のデッドヒート』最後の一篇になる。 dokusyonohito.hatenablog.com 最後だからというわけでもないが、発行年を見返したら、1984年、と書いてあった。偶然にちがいないが、オーウェルの小説がまだ一定のリアリ…

村上春樹『野球場』奇妙な観察は彼に小説を書かせるか?

今回は『野球場』。そして今回も短く書く。 dokusyonohito.hatenablog.com だしぬけに話がはじまる。「野球場」のすぐそばに学生時代住んでいた青年の話である。「僕」が彼から会って話を聞く、そういう形式が提示される。 小説を書くこと 青年、彼は小説家…