誰かあの本を知らないか

読むことについて書かれた作文ブログ。

MENU

村上春樹

村上春樹『タクシーに乗った男』移動の時代

久しぶりなので短いものを書く。 以前に村上春樹『タクシーに乗った男』をめぐって「共感とプラハの春」と題して書いた。書くには書いたが、タイトルにもある「タクシー」について回収していなかった。 dokusyonohito.hatenablog.com dokusyonohito.hatenabl…

村上春樹『ハンティング・ナイフ』歴史の終焉を切り裂くナイフ

村上春樹『ハンティング・ナイフ』。『回転木馬のデッドヒート』最後の一篇になる。 dokusyonohito.hatenablog.com 最後だからというわけでもないが、発行年を見返したら、1984年、と書いてあった。偶然にちがいないが、オーウェルの小説がまだ一定のリアリ…

村上春樹『野球場』奇妙な観察は彼に小説を書かせるか?

今回は『野球場』。そして今回も短く書く。 dokusyonohito.hatenablog.com だしぬけに話がはじまる。「野球場」のすぐそばに学生時代住んでいた青年の話である。「僕」が彼から会って話を聞く、そういう形式が提示される。 小説を書くこと 青年、彼は小説家…

村上春樹『雨やどり』幻想の向こうの娼婦

思い出したように村上春樹の小説について。 とりあえず『回転木馬』を読み終えよう。 dokusyonohito.hatenablog.com 前に何を書いたかまるで覚えていないので読み返したら、羞恥にまみれた。読み返すものではない。 さて、『雨やどり』である。 明治初年の本…

堀辰雄『風立ちぬ』構造の向こうへ

感想、序言に代えて 『風立ちぬ』年譜 物語構造論 堀辰雄と村上春樹 『風立ちぬ』 感想、序言に代えて 読み終えて、思ったのは江藤淳のことである。江藤淳といって若い方にどれくらい通じるのか不安になるけれども、思い出したのは『昭和の文人』にある堀辰…

村上春樹『風の歌を聴け』転向をめぐって②

村上春樹『風の歌を聴け』講談社文庫1982年7月15日第一刷発行 前回の記事を書き直したが、どうもわかりにくい。だしぬけに〈転向〉と書いたのがいけなかった。 dokusyonohito.hatenablog.com このブログは行きがかり上、村上春樹の作品を少しばかり取り上げ…

村上春樹『嘔吐1979』日記の疑念

村上春樹『回転木馬のデッド・ヒート』講談社(1985.10.15第一刷発行) 「今は亡き王女のための」について書いてから間が空いた。 dokusyonohito.hatenablog.com 筆者はサルトルの『嘔吐』を読んでいた。なんと面倒なことだろう。今回取り上げる短編(あるいは…

コンラッド『闇の奥』絶望的な想像力

コンラッド『闇の奥』岩波文庫(1985.1.25第一刷発行) 小説を読んでいるとたまに書籍とその書名が出てくる。 小道具としての場合もあるし、暗示だったり、象徴だったりする場合もある。 それが知った本なら親近感が湧くし、知らない本なら知見がひろがる。 ま…

村上春樹『今は亡き王女のための』暴かれる読み方

村上春樹『回転木馬のデッド・ヒート』講談社(1985.10.15第一刷発行)より、もくじ 亡き王女のためのパヴァーヌ 「今は亡き王女のための」。タイトルはモーリス・ラヴェルの『亡き王女のためのパヴァーヌ』から採ったものだろう。ピアノ曲、管弦楽曲。「亡き…

村上春樹『プールサイド』残酷な肉体

村上春樹『回転木馬のデッド・ヒート』講談社(1985.10.15第一刷発行) 「プールサイド」。ひとことで言えば、ある種の身体論である。 こう書くと、何を言ったような気になるが、気のせいである。 少なくとも、本作は「論」として描かれていない。その描かれて…

村上春樹『回転木馬のデッド・ヒート』読むことの帰する処

村上春樹『回転木馬のデッド・ヒート』講談社(1985.10.15第一刷発行) まいにち同じはなしをしている。評論文、感想文もとより研究論文ではないが、さてこれなんだろうという作文である。筆者もわからない。筆者じしんが、よくわからなくなったところから書き…

村上春樹『タクシーに乗った男』共感とプラハの春(2)

村上春樹『回転木馬のデッド・ヒート』講談社(1985.10.15第一刷発行) 前回、なぞかけのような終わり方をした。じつは筆者もわからないで書いているからである。 dokusyonohito.hatenablog.com 本来ならば、彼女という画廊オーナーの語りとなるべき、その絵を…

村上春樹『タクシーに乗った男』共感とプラハの春(1)

村上春樹『回転木馬のデッド・ヒート』講談社(1985.10.15第一刷発行) dokusyonohito.hatenablog.com プラハの春 「僕」は画廊をめぐって記事を書く、そんなライターの仕事をしているらしい。 とある取材先の画廊で、女性オーナーに「僕」は質問する。「あな…

村上春樹『レーダーボーゼン』象徴の不全

村上春樹『回転木馬のデッド・ヒート』講談社(1985.10.15第一刷発行) 筆者、冷や汗のごときをかきながら読むしかなかった。捨てようが逃げようが、それで逃げおおせる読書ならやめちまうがいい。もちろん、われとわがこころに言い聞かせている。

村上春樹『羊をめぐる冒険』歌物語

村上春樹『羊をめぐる冒険』上下 講談社文庫 悪く言う気になればいくらでも悪くいえてしまう作家がいる。

村上春樹『国境の南、太陽の西』歌のわかれ

村上春樹『国境の南、太陽の西』講談社(1992.10.12第一刷発行) あんまり褒めるひともない小説。長編小説である。 それでも、筆者がなんど本を整理しても、捨てず、売らず、残っている。 熱心な読者にはなんだか裏切られたようなところがあり、そうでない読者…

村上春樹『ノルウェイの森』短めの告白

自己紹介