誰かあの本を知らないか

読むことについて書かれた作文ブログ。

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2022-01-01から1年間の記事一覧

村田らむ『ホームレス消滅』ルポルタージュと良心

村田らむ『ホームレス消滅』幻冬舎(2020.5.28) 本書によれば、「ホームレス問題」は第一義には当然、社会弱者が困窮している状態を、同胞として見過ごすべきではなく、また社会の成員として労働と納税によって国家に参与させるべきだという、道義と法律に…

三島由紀夫『沈める滝』人工恋愛

三島由紀夫『沈める滝』新潮文庫(昭和38年12月5日発行) だしぬけで恐縮だが、筆者は文学がわからない。 小説、詩のたぐいがよくわからない。 それら創作が情感や情緒にかかわるものだとするなら、それらの欠落、未発達に由来して、言語芸術の門まえで立ち…

高木俊輔『維新史の再発掘ー相楽総三と埋もれた草莽たちー』敗者の歴史

高木俊輔『維新史の再発掘ー相楽総三と埋もれた草莽たちー』NHKブックス(昭和45年3月20日第一刷発行) 誰だって負け組にはなりたくない。この、「誰だって」という世界を私たちは生きている。辛いことだ。

田中彰『明治維新と西欧文明』可能性の文体

明治5年(1871)12月23日、岩倉具視を全権大使とした一行が横浜を発っている。 本書は、この岩倉使節団の報告書である『特命全権大使米欧回覧実記』(以下、『回覧実記』)を中心に、若き明治政府の要人たちが遭遇した〈西欧文明〉が何であったかを説いたもの…

ツヴァイク『人類の星の時間』まばゆさの近代

シュテファン・ツヴァイク 片山敏彦訳『人類の星の時間』みすず書房(1996.9.30第一刷発行) 今となっては想像もつかないことかもしれない。 <近代>がきらびやかで、目も眩むほどまばゆく、洋々たる前途を望ませた時代が存在する。

鈴木伸元『加害者家族』共感と想像力と好奇心

鈴木伸元『加害者家族』幻冬舎(2010.11.27初版) ルポルタージュの価値は、核心に迫ることではない。真実を伝えるとか、世論に訴えるとか、まして警鐘を鳴らすなんてことでもない。著者という責任主体者が、好奇心という野次馬根性といかに渡りあって、対決…